主な病気と治療方法

腎臓がん

腎細胞癌とは

腎細胞癌は腎臓の実質より発生する腫瘍で、尿をつくる尿細管細胞より発生する癌です。癌が大きくなると血尿や痛みを伴うこともありますが、一般的に癌が小さいうちには症状がありません。最近では、健康診断の普及により超音波検査などで発見される小径腎細胞癌も増加しています。腎細胞癌の発生頻度は成人のがんの2~3%とされ、男性の方が腎細胞癌になりやすいといわれています。

検査・診断

腎細胞癌の診断は、超音波検査、CT、MRIなどの画像検査を組み合わせて行います。腎細胞癌と鑑別する必要性がある良性腫瘍(オンコサイトーマ、腎血管筋脂肪腫など)もあります。造影剤を使用したCT、MRIを行うことで、大部分の腎細胞癌の診断は可能です(中には診断が難しい腎細胞癌もあります)。腎細胞癌は、腫瘍の直径が4cm以下のものがStage 1a、直径が4~7cmのものはStage 1b、7-10cmものをStage 2a、10cm以上のものをStage 2bと分類します。Stage3は腎のまわりへ癌の浸潤の強いものとされ、Stage 4は癌が他の臓器に転移、浸潤しているものを言います。腎細胞癌では腫瘍の大きさにより癌の悪性度が悪くなる傾向があり、7cmを超えたものでは手術後に転移が出現する可能性が高くなります。

腎細胞癌の進展度分類
腎癌取り扱い規約(メディカルレビュー社出版)2020年、p40-41より転載

治療

転移を認めない腎細胞癌であれば、手術治療が必要になります。小径腎臓細胞癌(7cm以下)であれば、腎機能温存手術(腎部分切除、凍結療法)が選択されます。2016年より、ダビンチを使用したロボット支援腎部分切除が保険適応となり、当科でも積極的にロボット手術による腎部分切除を行っています。

ロボット手術による腎部分切除(上記の内視鏡手術をロボット:ダヴィンチシステムで行う)

癌が大きく、根治的腎摘除術(癌のある腎臓を周囲の脂肪組織を含めてすべて摘出する)が必要な場合は、以前は腹部を大きく開くか、側方の肋骨を切除してから行われる開腹手術が一般的でした。しかし、1992年以降は腹腔鏡下腎摘除術を行うことがほとんどで、当科でも年間60例程度の腹腔鏡下腎摘除術を行っています。また、2022年4月より腎細胞癌に対するロボット支援腹腔鏡下根治的腎摘除術が保険適応となり、癌が非常に大きい場合や腎静脈に腫瘍が進展している場合など高難易度の場合はダビンチを使用する場合があります。しかし、腹腔鏡手術やダビンチでは危険性が高いと判断された場合は、開腹手術で行う場合もあります。

腹腔鏡下根治的腎摘除術

転移性、進行性腎細胞癌治療には、現在では、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を組み合わせて使用します。免疫チェックポイント阻害薬は癌による免疫抑制を解除することで、人が本来持つ免疫活性を回復・活性化させ、腫瘍増殖を抑制し、分子標的薬は腫瘍が増殖する分子(血管新生因子、腫瘍増殖因子)を阻害することで、抗腫瘍効果を発揮します。現在一次治療として5種類の免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の組み合わせが使用可能です。非常に高価な薬剤ではありますが、それまでの治療では、長期生存が望めない患者さんに大きな希望を与える薬剤の登場でした。起こりえる薬剤の副作用も、いままでの抗癌剤とは全く異なりますが、上手に使用することで、腎細胞癌との長期共存が可能となりました。

当科では、上述のような腎細胞癌の悪性度、進展度などを詳細に検討し、腎部分切除術、根治的腎摘除術などの手術治療(開創手術、腹腔鏡手術、あるいはロボット支援手術)、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物治療、あるいはそれらの併用治療について、患者さん毎に最も適切な治療方針を考慮し、患者さんご自身と十分に相談して治療を行っています。

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