主な病気と治療方法

副腎腫瘍

副腎とは

副腎(ふくじん)は腎臓のやや上の高さで、背中側の左右の後腹膜にある2~3cmの臓器です。副腎はさまざまなホルモンを産生・分泌する内分泌臓器で、血圧の調節や体の様々な代謝の調節を行っています。副腎皮質と副腎髄質にわけられ、主な機能は以下のようになります。

副腎皮質
コルチゾールとアルドステロンと呼ばれるホルモンを産生します。コルチゾールはストレスから体を守り、血液中の糖の調節、血圧を正常に保つなど生体内で必要不可欠なホルモンです。アルドステロンは塩分、カリウム、水分といった電解質のバランスを保つのに重要です。コルチゾールは生きていくのに絶対必要なホルモンです。もし副腎の病気が両方にあり両側の副腎を摘出しないといけなかった場合、または片方だけの摘出であってもホルモン産生が不十分なようですと、内服によってホルモンを補充する必要があります。
副腎髄質
アドレナリンとノルアドレナリンというホルモンを産生します。これらのホルモンは、血圧、心拍数、発汗など、交感神経系によって調節される身体活動、特に非常時におけるホルモン制御に影響を与えます。

副腎の病気とは

副腎の中に発生した腫瘍を副腎腫瘍と言います。多くの腫瘍は良性ですが、悪性の腫瘍が発生することもあります。副腎は、様々な種類の細胞からなり、それぞれの細胞の内分泌的な役割も異なりますので(産生するホルモンの種類が異なる)、どの細胞から腫瘍が発生したかによって、症状や身体への影響も異なってきます。腫瘍のなかにはホルモンを分泌するもの(機能性)、しないものもあり(非機能性)、その場合には臨床症状が現れないこともあります。
副腎の皮質にある細胞が腫瘍化すると副腎皮質ホルモンが過剰に産生され、コルチゾールというホルモンが過剰に分泌されると「クッシング症候群」を引き起こし、満月様顔ぼう、中心性肥満、高血圧、高血糖、筋力低下、骨粗鬆症、月経異常、精神異常、多毛などの症状が出現します。アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されると「原発性アルドステロン症」を引き起こし、高血圧、低カリウム血症などが発症します。二次性高血圧の原因の一つであり高血圧症の3-10%を占めます。また副腎髄質の腫瘍は「褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)」と言われ、アドレナリンが過剰に分泌され、高血圧、頭痛、頻脈、高血糖、発汗などを引き起こします。10%が両側性、異所性、家族性、悪性腫瘍と言われ、長期的な経過観察も必要となります。他にもホルモンを分泌しない副腎腺腫や副腎皮質癌、他の臓器からの転移性腫瘍などがあります。

検査・診断

副最近は、健康診断でのCT、MRI、超音波検査などで偶然発見される患者さんが増えていますが、高血圧や糖尿病などの精査中に見つかることもあります。例えば、高血圧の原因を精査している時に、血液中にアドレナリンやアルドステロンなど副腎から分泌されるホルモンの血液中の濃度が高い場合には、副腎の画像検査(CT、MRI検査など)が行われ、副腎に腫瘍が見つかった場合には、副腎腫瘍よる症状であると診断されます。確定診断には、更に詳しいホルモン検査、負荷試験、カテーテル検査が必要となり内分泌内科、放射線科専門医と密に連携をとり正確な診断にあたっています。

国立国際医療研究センター病院ホームページより引用

治療

副腎腫瘍によって産生されるホルモン(機能性)によって高血圧、高血糖などの症状が引き起こされている場合には、腫瘍の摘出が行われます。従来の開腹手術に代わって、最近では腹腔鏡下手術やロボット支援手術が行われます。もちろん、腫瘍が大きい場合や悪性が疑われる場合など開腹手術が選択される場合があり、病状によっては内科的治療が選択される場合もあります。このように腫瘍の大きさや悪性の有無、その他の条件により手術方法は異なりますが、基本的に副腎の手術は腹腔鏡、ロボット支援下で施行しています。
腹腔鏡、ロボット支援下手術では5-10mmの穴を3-4個あけるだけで副腎の摘出が可能です。そのため痛みがかなり少なく、手術翌日から歩行が可能となり、術後の回復もおなかを大きく切る場合に比べてはるかに良好です。また傷が小さいため整容面でもおおきなメリットがあります。

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