間質性膀胱炎とは
間質性膀胱炎とは、膀胱の間質(膀胱壁の内側にある粘膜上皮と筋肉の層の間)にある層(下図参照)に慢性的な炎症が起こり、膀胱が硬くなり、容量が小さくなってしまう病気です。通常の細菌感染でおこる膀胱炎とは別の病気であり、最近の研究によって、体の中の免疫応答の関与が考えられていますが、発病や重症化の詳細なメカニズムは分かっていません。
膀胱痛、頻尿、尿意の亢進、尿意切迫感(急に起こる我慢のできない尿意)などの症状がみられ、これらの症状は困窮度が高く、生活の質に大きく影響を及ぼします。ただ泌尿器科専門医であっても、その診断や治療に苦慮することが多く、重症症例は、国の指定難病となっています。
症状・診断
尿がたまってくると膀胱の不快感や違和感、痛みが間質性膀胱炎の特徴的な症状で、その他にも尿が近くなる(頻尿)症状や尿意の亢進、残尿感、などが挙げあれます。ただ、これらの症状や程度は患者さんごとに異なり、また他の疾患(過活動膀胱や前立腺肥大症、慢性膀胱炎など)でもみられるため、症状だけで診断を行うことは困難です。
間質性膀胱炎の診断のためには、排尿日誌、症状質問票、膀胱鏡(膀胱の中を観察するカメラ)を行います。膀胱鏡検査において図に示したようなハンナ病変という特有の病変を認めることが間質性膀胱炎の診断には必須となります。間質性膀胱炎と似た症状があるものの、膀胱鏡でハンナ病変が確認されない場合は「膀胱痛症候群」と呼んで、間質性膀胱炎とは区別します。
治療
治療は主に、外科的治療、薬物治療、保存的治療に分けられます。
- 外科的治療
- 外科的治療として、「経尿道的ハンナ病変凝固術」と「麻酔下膀胱水圧拡張術」が有効です。ハンナ病変部を電気やレーザーで焼灼凝固あるいは切除することで、尿がたまった時の膀胱痛や頻尿症状が軽減することが報告されています。また間質性膀胱炎では、膀胱が硬くなっており、拡張しないために尿が貯まってくると痛みが出現すると考えられています。麻酔をかけて強制的に膀胱を生理食塩水で拡張することで硬さを和らげることが期待でき、症状の改善が見込めます。入院による加療が必要ですが、短期の入院で治療が行えます。
- 薬物治療
- 薬物治療として、2021年にジメチルスルホキシド(DMSO)を膀胱内に注入する治療が保険で認められるようになりました。この薬剤は下図のように外来通院にて2週間おきに6回注入します。薬剤の膀胱内注入により膀胱の炎症を改善させ、疼痛や頻尿の改善が期待できます。この薬剤以外、間質性膀胱炎に対して適応が認められている内服薬はありませんが、膀胱の弛緩(柔らかくする)作用を有する塩酸アミトリプチリンやアレルギー作用を抑える抗ヒスタミン薬、免疫を抑える作用を有するステロイド薬などが間質性膀胱炎の治療に用いられることがあります。
-
- 保存的治療
- 保存的治療としては食事療法や行動療法が挙げられます。間質性膀胱炎では食事や精神的ストレスの影響を受けることが知られています。個人差はありますが、柑橘系の果物やジュース、香辛料、カフェイン、アルコールは症状を増悪することが多いといわれています。また尿意があってもできるだけ排尿を我慢して膀胱を広げてからトイレに行く膀胱訓練も有用です。