研究・業績

臨床研究について
(オプトアウト)

臨床研究のうち、診療データ等の情報や余った検体のみを用いた研究のような、侵襲や介入のない研究は、国が定めた指針により、対象となる方から個別の同意を得る必要はありません。ただし、その研究に関する情報を公開し、患者さんが拒否できる機会を保障することとなっています。このような手法を「オプトアウト」といいます。
利用する情報からは、住所や氏名などの個人情報は削除します。また、研究成果は学会や専門誌などで発表されることもありますが、その場合にも個人情報は公表されません。
研究のためにご自身の情報が利用されることを望まない方は、各研究の担当者へお知らせください。
情報利用の拒否を申し出ても、そのことで不利益を受けることはありません。

大学病院・関連病院の枠組みを
超えた臨床研究
(MEGUMIプロジェクト)

名古屋大学泌尿器科では大規模な関連病院が多いメリットを生かし、大学病院、関連病院の垣根を超えた臨床研究(MEidai GenitoUrinary Mega Investigation(MEGUMI)プロジェクト)を行っています。具体的には下記の9つの専門領域について分科会を設置し、臨床データベースの共有や前向き/後ろ向き観察研究などの活動を行っています。
中堅までの医局員は原則的に複数の分科会に所属し、各専門領域について定期的に意見交換を行い、見識を深めます。研究成果は国内外の学会で発表する他、論文化されます。また、分科会によっては定期的に教育セミナーなどを開催し、名古屋大学泌尿器科グループ全体のレベルアップを支えます。そしてこれらの活動を通じて尿路性器疾患に関して新たな知見を見出し社会に貢献します。

9つの専門領域

  • 腎臓がん
  • 尿路上皮がん
  • 前立腺がん
  • 下部尿路機能・尿路再建
  • 腎移植
  • ウロギネコロジー(女性泌尿器科)
  • 尿路結石・小児泌尿器
  • ロボット手術、腹腔鏡
  • 性機能・アンドロロジー・性同一性障害

転移性前立腺癌のゲノム、
トランスクリプトーム解析研究
(研究責任者:赤松 秀輔)

近年、様々な新規治療の開発により転移性前立腺癌の治療が複雑化しています。しかし、どの患者さんにどのタイミングでどの治療を行うのが最善なのかその指標はなく、経験的に治療が行われているのが現状です。本研究では京都大学、秋田大学、九州大学他、全国の22の大学と連携して転移性前立腺癌患者さんの診断時の生検組織を用いて全エクソンシーケンス解析や最新の解析技術を用いた遺伝子発現解析を行い、治療最適化のためのバイオマーカーを導出することを目指しています。また、本研究では本邦で初めて、大規模な日本人の転移性前立腺癌患者さんのゲノム、トランスクリプトームの全容が明かされる予定です。

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単一細胞空間遺伝子発現解析を
用いた前立腺癌のゲノム病理学的
分化度分類の構築
(研究責任者:赤松 秀輔)

前立腺癌の細胞分化度(グリーソンスコア:GS)は前立腺癌の悪性度の重要な指標です。しかし、GSは肉眼的指標であるため、観察者や施設による誤差が生じ、臨床的な問題になっています。本研究では最新のシングルセルシーケンス解析および空間遺伝子発現解析を駆使して、従来の肉眼的な分化度分類では反映できなかった細胞の特性も加味した「ゲノム病理学的な分化度分類」を構築することを目指します。さらに、本解析で得られた結果を元に前立腺癌に対する新たな治療標的の探索にも挑みます。

がん関連繊維芽細胞(CAF)を
対象とした転移性膀胱癌の
新規治療の創出
(研究責任者:榎本 篤[腫瘍病理学])

転移性尿路上皮癌では全身治療として免疫チェックポイント阻害剤が投与されますが、奏功率は不十分であり、新規治療の創出が求められています。名古屋大学腫瘍病理学教室の榎本教授の指導のもと、名古屋大学泌尿器科ではがん関連繊維芽細胞が発現するMeflinという分子が「がん抑制性線維芽細胞」のマーカーであり、膀胱癌においてMeflin高発現のCAFを誘導する薬剤で前治療を行うことで免疫チェックポイント阻害剤の治療効果が増強することを見出しました。本研究の成果を元に、現在、泌尿器科主導で転移性膀胱癌患者さんにおける同薬剤を用いた第2相医師主導治験を準備しています。

尿検体を用いた膀胱癌に対する
リキッドバイオプシーの開発
(研究責任者:井上 聡)

膀胱癌においては尿を用いてこれまでに様々な方法で新規のバイオマーカーの開発が行われてきましたが現在までに尿細胞診を凌駕する有用性を備えたものはありません。その原因の一つとして、膀胱癌患者さんでは肉眼的に癌と診断できない部位にも既に様々な遺伝子変異が生じていることがあります。本研究では患者さんの手術検体を詳細に検討することで癌患者さんにみられる遺伝子変異のうち、癌部でしか起こりにくい変異と正常部でも起こりやすい変異をリストアップし、従来の検査法よりも精密に尿中で癌特有の変化を同定する手法を開発して低侵襲なバイオマーカーとすることを目指します。

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排尿筋低活動の臨床的特徴、
進展機序の解明と
新規治療法の開発
(研究責任者:松川 宜久)

排尿筋低活動は、膀胱の収縮機能の低下により排出障害、残尿過多などを来す疾患で、排尿障害を有する患者さんの20%以上でみられるとの報告があります。ただ侵襲的な検査を行わないとその正確な診断が困難であり、またその発生要因や治療法についても確立していません。このような背景から簡便な排尿筋低活動の診断法の確立、その増悪因子の解明は、膀胱機能を低下させない治療にもつながり、高齢者の排尿自立、健康寿命の延伸にも寄与できると考えています。
本研究では、名城大学理工学部との共同研究で人工知能を用いた非侵襲的診断法の確立に加えて、これまでの先行研究の成果から膀胱細菌叢ならびに内尿道口の硬さに注目して、膀胱機能に与える影響を基礎的、臨床的両面から検討を行い、病態の解明や新規治療法の可能性について探究して参ります。

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下部尿路機能障害診療における
シェアードディシジョンメーキングの実践と、
より安全で効果的な治療法エビデンスの構築
(研究責任者:松川 宜久、西井 久枝、馬嶋 剛)

超高齢化社会を迎えて、下部尿路症状に対する診療需要は増加している一方、約50%の症例で治療に満足していないといった報告も見られ、その一因として、医師と患者のコミュニケーション不足、個々の症例にあった治療選択が行われていないことが挙げられます。これらの課題に取り組むべく、名古屋大学泌尿器科関連の若手医師を対象として医師と患者のコミュニケーションを高めることを目的とした、特に治療方針決定の際に、医学情報だけでなく、患者さんの価値観や生活の事など個人的・社会的な情報についても共有した上で、最終決定を医師に任せるのではなく患者と共に行うプロセスを実臨床で導入するための教育事業を展開して参ります。また、国立長寿医療研究センター泌尿器科、愛知医科大学泌尿器科が中心となって、下部尿路機能疾患に対する効果的で高齢者にも安全な薬物治療のエビデンス構築を目指して、多施設臨床試験を複数実施中です。

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